フローライトやEDガラスなどが天体望遠鏡に使用されるまでは、屈折望遠鏡のF値は10〜15が普通でした。天体望遠鏡では同じ倍率で見る場合、Fが小さくなると焦点像を拡大するルーペ(アイピース)倍率が大きくなります。つまり、同じ倍率で見るにはF:5の望遠鏡はF:10の望遠鏡よりも2倍拡大されて見られるわけで、焦点距離が1/2になると収差性能は2倍良好にしなければ、同じ倍率で同等の性能にはなりません。しかし屈折望遠鏡でF値を値小さくすると、通常は球面収差、特に波長ごとの球面収差が増大します。SKY90では、F5.6というきわめて短焦点の2枚玉屈折望遠鏡でも、フローライトと組み合わせる凹レンズに環境に優しいエコレンズを使用し、レンズ間隔を最適にした設計で2枚玉フローライトとほぼ同じ収差性能を得ています。図は、同じ硝子材で錫泊密着式2枚玉をF:5.6に設計したものですが、これでは球面収差が大きすぎて当社の規格としては市場に出せません。注目していただきたいのは、波長ごとの球面収差の少なさです。球面収差の曲がりが少ないということは、像のコントラストの良さにつながります。
SKY90はフードの収縮時の全長が480mm、重量3.2kgという、とてもコンパクトな屈折望遠鏡ながら、別売の拡大レンズEXQ-1.6×を使用し焦点距離800mmとした時の高倍率性能はFSシリーズとほぼ同じになりなす。また、別売のフラットレデューサーを使用すると焦点距離407mm(F:4.5)でφ45mmのイメージサークル全面に平坦な像を結びます。このフラットレデューサーは、眼視性能も良好に補正してあるため平坦な像面を望む場合の低倍率観望用に有効です。また冷却CCD用としても、撮像できる波長域での色消しと像面平坦性を持っており多様な観測目的に使用できます。