赤緯体に2つのステッピングモーターを内蔵し、赤経・赤緯の両軸を手元のコントロールボックスで操作できるEM-10赤道儀は、携帯性を考慮してメタルの軸受けを採用していました。上位機種のEM-200は当初より両軸をベアリングで支えていたため、小型のEM-10とは搭載質量にかなりの格差がありました。携行性のよいサイズのまま、少しの質量増加で搭載質量を増やし、強度、精度を上げたのがEM-11です。 ベースのEM-10は、赤経・赤緯共にウオームホイルによる全周微動です。赤道儀の心臓部ともいえるウオームネジの軸受けに高精度のベアリングを使用して、耐久性と追尾制度の向上を図りました。EM-11ではさらに、赤経・赤緯軸の軸受けに各軸4個、計8個のベアリングを追加しました。これにより、強度と精度が20%(対EM-10)向上し、搭載重量は約8.5kgになりました。
極軸望遠鏡の倍率が、EM-10の5倍から6倍にアップ。スケールパターンは北極星と天の北極との距離角を半径とした3円と方位角を読み取る時間目盛りで構成され、3つの同心円を目安に歳差の補正も西暦2030年まで対応できます。また南半球用の指標も、八分儀座σ星の目安になる半径1度の円だけだったのが、八分儀座の3星を使うものになり、より容易にそして精度よくセットできるようになりました。もちろん、モーターも南半球用に簡単に逆転できます。
夕空の彗星を狙う場合、日が暮れる前に組立を完了して北極星が見えるのを待ちますが、極軸を合わせようとしたら方位微動の範囲外だと、三脚ごと持ち上げて回わすようになります。そんな不便を解消する為に、三脚架台の上で赤道儀が360度回転するようにしました。(注:メタル脚使用時は、この機構を使えません)
■天体の導入に便利な最高250倍の高速駆動
電源スイッチをONにすると赤経モーターが恒星時駆動を開始し、極軸を合わせておけば一度捉えた天体を望遠鏡の視野から逃がしません。天体の導入は、パソコンを繋いだTemma2Jr.なら、見たい星をクリックするだけで自動で天体を導入してくれます。USD3 でも望遠鏡に触らず、ハイスピードモードでコントロールボックスの4つのボタン操作だけで望遠鏡を目的の天体へ向けられます。また、ガイド撮影時はノーマルモードにスイッチを切り替えることで先ほどのコントロールボックスにある4つのボタンが、ガイドの修正用ボタンとして働きます。修正速度は、ボタン操作により恒星時の±10〜90%の範囲で段階的に調整できます。
赤経・赤緯駆動用モーター2個、それぞれの駆動ギア、そして駆動用電子回路までも、すべて赤緯体に内蔵しました。これにより、外付け部品を無くして外観をスッキリさせ、高速駆動及びガイドの修正は手の中にフィットする小型コントロールボックスでおこなうことができます。